かならぬのである。[#地から1字上げ](十月十四日)
六の一
人間がほかの動物と比較すべからざる経済的発達を遂ぐるに至りし根本原因が、はたして私の言うがごとく、道具の発明にありとするならば、近代に至りその道具がさらに一段の発展を遂げて機械となるに至りしことは、実に経済史上の一大事件といわねばならぬ。もしそれ機械の力の驚くべきものなる事は、今さら私の説明をまたざるところである。試みに尋常小学読本巻の十一を見るにいわく「昔の糸車にて紡《つむ》ぐ時は、一本の錘《つむ》に一人を要すべきに、今はわずかに六七人の工女にてよく二千本の錘を扱うを得《う》べし。加うるにかの蝋燭《ろうそく》の心《しん》とする太き糸、蜘蛛《くも》の糸のごとき細き糸、細大意のままにして、手紡ぎのごとく不ぞろいとなることなし。機械の力は驚くべきものにあらずや」と。しかも今日西洋において最も進歩せる機械にあっては、一人の職工よく一万二千錘を運転しうるという。さればこれを紡績の一例について見るも、機械の発明のためにわれわれの生産力は一躍して千倍万倍に増進したわけである。
機械の効果の偉大なることかくのごとし。
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