1912. p. 60.
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 ただここになお一言の説明を要するは、もし私の言うがごとく英米独仏の諸国にはたしてそうたくさんの貧乏人がおるならば、世間でこれらの諸国をさして世界の富国と称しておるのが怪しいではないかという疑問である。思うにこれらの諸国がたくさんの貧乏人を有するにかかわらず、なお世界の富国と称せられつつあるゆえんは、国民全体の人口に比すればきわめてわずかな人数ではあるが、そのきわめてわずかな人々の手に今日驚くべき巨万の富が集中されつつあるからである。貧乏人はいかに多くとも、それと同時に他方には世界にまれなる大金持ちがいて、国全体の富ははるかに他の諸国を凌駕《りょうが》するからである。
 試みに英、仏、独、米の四個国について富の分配のありさまを見るに、実に左表のごとくである。(昨年刊行キング氏著『米国人の富及び所得』九六ページ*)。
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* King, The Wealth and Income of the People of the United States, 1915. p. 96.
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