ある。すなわち第一の意味における貧乏なるものは、ただ金持ちに対していう貧乏であって、その要素は「|経済上の不平等《エコノミック・インイクオリテー》」である。第二の意味における貧乏なるものは、救恤《きゅうじゅつ》を受くという意味の貧乏であって、その要素は「|経済上の依頼《エコノミック・デペンデンス》」にある。しかして最後に述べたる意味の貧乏なるものは、生活の必要物を享受しおらずという意味の貧乏であって、その要素は「|経済上の不足《エコノミック・インサフィセンシイ》」にある。
 すでに述べしごとく、この物語の主題とするところは、もっぱら第三の意味における貧乏であるけれども、なお時としては、おのずから第一ないし第二の意味の貧乏に言及することもありうる。しかしその時には必ず混雑を避くるために、私は常に相当の注意を施すことを忘れぬであろう。[#地から1字上げ](九月十五日)

       二の一

 私のいうところの貧乏人の意味は、前数回において私のすでに説明したところである。しからばその標準にもとづき、今日の文明諸国において、かくのごとき貧乏人ははたしてどれだけいるかというに、そは実に驚くべ
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