ヘ巨額の資金の提供を申しいでた者もあった。そこでレーンも大いにこれに感激し、「同志の人々が、その多年の辛苦によりようやくもうけ得た金をば、かくのごとくなんらの不安なく疑惑なく自分に委託して来るのを見ると、私は涙を流さずにはいられない。これほどの信頼にそむくほどなら、私はむしろ死ぬるであろう」と言って、自分も約壱万円の財産を出資し、全力をささげてその事業に従事することを誓った。[#地から1字上げ](十二月七日)

       十の五

 レーン氏の企てた理想国の建設は、前回に述べたるがごとき経過をもって着々進行し、ついに壱万弐千円を投じて六百トンの汽船「ローヤル・ター」を買い入れ、まず第一回の移民として二百五十名の男女がレーンとともにこれに搭乗《とうじょう》して南米に出発することになった。
 さてその出発の光景、航海中の出来事、ないし目的地到着後の事業の経過等については、学問上興味ある事実も少なくないが、私は今一々それをお話ししておる余暇をもたぬ。ただ私がここにこの話を持ち出したのは、最初天下に実物教育を施すというほどの意気込みをもって始められたこの事業も、ついには失敗に帰したという事
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