り]
[#「諸国における富の分配」のキャプション付きの図表(fig18353_03.png)入る]
次の表は米国の統計学者キング氏がその近業に載すところである。私はめんどうを避くるがため、氏がいかなる材料をいかに利用することによってこの表を調製するに至ったかの説明を略する。いずれにしても決して正確なものではないが、しかしだいたいの趨勢はこれによってほぼ看取し得らるる。試みにその一斑を説明せんに、右の表のうち、最貧民とあるは、私が先に述べた第一の意味の貧乏人であって、すなわち富者に対する貧乏人という意味である。この表では、全国民中比較的に最も貧乏なものから数えて、だんだんに上にのぼり、かくて全人口数の六割五分に達するまでの人員をばかりに最貧民としてこれを一まとめにし、さてその人数から言えば全人口の六割五分に相当するだけの者が現に所有しつつある富の分量は、はたして全国の富の何割を占めつつあるやを見たのである。しかしてその結果は、表に示すがごとく国によって多少の相違はあるが、まずこれを英国について言えば、その六割五分だけの人間が寄り集まって持っている富の分量は、全国の富のわずかに一分七厘(百分の二弱)にしか当たらぬのである。比較的に下層階級の富有な米国でも、同じく全人口中六割五分だけの者が、全国の富のわずかに五分余りしか所有しておらぬのである。
さて最も貧乏なものから数えてまず全人口数の六割五分を取ったのちは、さらにだんだんに上にのぼって、今度は全人口数の一割五分に相当するだけの人員を一まとめにしてこれを中等の下となし、その次の一割八分に相当する者はこれを中等の上となし、最後に残れるもの、すなわち全国民中最も富めるものにして、人数より言えば全人口数のわずかに二分(百分の二)に相当する部分のものを、同じく一まとめにしてこれを最富者となし、おのおのの所有に属せる富の割合を算出したのである。
[#「英米独仏における富の分配」のキャプション付きの図表(fig18353_04.png)入る]
[#ここから図表下部解説文]
ここに掲ぐる一図は、前に掲げたる事実(三〇ページ参照[#「諸国における富の分配」の図表のこと])をばロレンズ氏の曲線を用いて図に現わしたものである。しかして横は家族数を示し、縦は富の分量を示す。家族は最も貧乏なるものを最右端に置き、それより順次左に富める者を排
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