大に失せるがごとく見ゆるも、かかる差異は、食物と労働との関係を計算に入るると否とによりて生ずるのである。現に『いかに生活すべきか』には「普通の座業者は一日約二千五百カロリーを要する、しかしからだが大きくなればなるほど、また肉体的労働に従事すればするほど、ますます多くの食物を要する」と断わってある。しかるに貧乏人は、いずれの国においても最も多くの肉体的労働に従事しつつあるものである。これ貧乏線測定の標準とすべき所要食料の分量が、普通人のために設けられたる標準とやや相違するところあるゆえんである。
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* How to Live, 1916. p. 30.
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思うに所要熱量が労働の多少に大関係を有することは論をまたぬが、試みにその程度を示さんがために、私は左に一表を掲げる。これはフィンランドの大学教授ベケル及びハマライネンの二氏が、個々の労働者につきその実際に消費するところの熱量を測定したものである。
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職業 年齢 身長(フィート―インチ) 体重(ポンド) 休業中一時間内の消費熱量 労働中一時間内の消費熱量 一日間の消費総熱量(八時間労働、十六時間休養)
製靴業《せいかぎょう》 五六 五―〇 一四五 七三 一七二 二五四四
同 三〇 五―八 一四三 八七 一七一 二七六〇
裁縫師 三九 五―五 一四一 七二 一二四 二一四四
同 四六 五―一〇・五 一六一 一〇二 一三五 二七一二
製本業 一九 六―〇 一五〇 八七 一六四 二七〇四
同 二三 五―四・五 一四三
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