第3水準1−47−74] 秋水渺無津
如何草亭上 卻欠倚闌人
[#ここから2字下げ]
秋の山は痩せてそそり立ち
秋の水は果しなくはろばろ
いかなれば草亭のおばしま
秋をめづる人のなき
[#ここから4字下げ]
題庠闍黎二画(その二)
雪景
溪上望前峯 巉巉千仭玉
渾舍喜翁歸 地爐※[#「火+畏」、第3水準1−87−57]芋熟
[#ここから2字下げ]
渓ゆ望めば聳え立つ向ひの峰は
つもりつもりて雪ましろなり
帰り来《こ》しおきな囲みて
よろこぶや家の人々
ゐろりには芋やけてほろほろ
[#ここで字下げ終わり]
前の秋景の図には、人物描きあらざるも、この雪景の方には、蓑を着、雪を冒して、とぼとぼと帰りゆく一人の人物描きありしものと思はる。[#地から2字上げ](作者時に六十七歳)
[#ここから4字下げ]
春のおとづれ
早春
西村一抹煙 柳弱小桃妍
要識春風處 先生※[#「てへん+主」、第3水準1−84−73]杖前
[#ここから2字下げ]
たちそめし霞のもとにわれ来れば
西の村柳めぐみて小桃《セウタウ》うるはし
春のありがを知らまくば
わが曳く杖のゆくへこそ
[#ここで字下げ終わり]
小桃については、放翁の随筆集たる老学庵筆記に次の如く書いてある。「欧陽公、梅宛陵、王文恭の集、皆な小桃の詩あり。欧詩に云ふ、「雪裏花開いて人未だ知らず、摘み来り相顧みて共に驚起す。便《すなは》ち須《すべか》らく酒を索めて花前に酔ふべし、初めて見る今年の第一枝」と。初めただ桃花に一種早く開く者あるのみと謂《おも》ひき。成都に遊ぶに及び、始めて識る、謂はゆる小桃なるものは、上元前後即ち花を著け、状は垂糸の海棠の如くなるを」。即ち小桃といふのは、もちろん小さな桃のことではなく、旧暦正月十五日前後、百花に先だちて花をつけ、枝垂れた海棠のやうな状をしてゐる特殊の木の名である。
[#地から2字上げ](作者時に六十九歳)
[#ここから4字下げ]
四更起き出でて書を読む
四月十三日四更起讀書
七十未捐書 正恐死乃息
起挑窗下燈 度此風雨夕
[#ここから2字下げ]
七十未だ書をすてず
死なばはじめてやみなんか
起きいでてともしかきたて
窓ちかき机にむかひ
この風雨《ふきぶり》の夜《よ》をわたる
[#地から2字上げ](作者時に七十一歳)
[#ここから4字下げ]
乞食の歌へる(そ
前へ
次へ
全7ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
河上 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング