せのうつつともよし
かへりみば六十四歳の今のさがわがをさなくてありし日のごと
かにかくに力のかぎり咲きいでて咲きみだれつつ衰ふらむか
夢となりぬや栗毛の馬に鞭あつるもののふがにも京を立ちしが(居を東京に移せしは昭和五年の一月の初なり、今や早く十三年前の夢と化しぬ)
あたたかにすぐるは分に越えむかと寒さにたへてうすぎしてをり
紙のへに白髪《しらが》落ちくるしきりなりみんなみのまどにふみよみをれば
四坪《よつぼ》にも足らはぬ庭のすみながら赤ばみてゆく南天の実《み》あはれ
うす寒く曇れる秋のゆふぐれを碁譜ならべつつ人をこほしむ
書《しょ》にあきぬ碁をうつ友の今来なば嬉しからむか秋のゆうぐれ
朝な夕なをしものなべてまうほりて貧しかる身はすくよかに生く[#地から1字上げ]十一月三日、四日
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生日
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いとけなきわれをすずろに愛《かな》しみしおほちちのとしいまこえむとす
手錠して荒川の獄に移されし秋雨《あきさめ》のけふぞ忘らえなくに
[#地から1字上げ]十月二十日
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清水寺
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南洲の詩碑仰がむとけふもまた
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