年後 豈に図らむや十有余年の後、
老眼重對比叡峰 老眼重ねて対す比叡の峰。
[#地から1字上げ]二月四日
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正月念七日、欲見青龍老師、訪洛北栖賢禪寺、
僧院闃不見人影、不遇而歸、至後日始知、當
時老師獨坐於深院、仍有此作、寺在上高野水
車町、溪聲頗壯、到處見水車
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孤※[#「「筑」の「凡」に代えて「おおざと」、第3水準1−89−61]訪僧踏霜行 孤※[#「「筑」の「凡」に代えて「おおざと」、第3水準1−89−61]僧を訪ね霜を踏んで行けば、
空院沈沈草※[#「尸+(彳+喬)」、第4水準2−8−21]横 空院沈沈として草※[#「尸+(彳+喬)」、第4水準2−8−21]横はる。
惟聽青龍長廣舌 惟だ聴く青竜の長広舌、
滿山松籟和溪聲 満山の松籟渓声に和す。
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(註)蘇東坡詩、溪聲便是廣長舌、山色豈非清淨身、夜來八萬四千偈、他日如何擧示人
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[#地から1字上げ]二月五日作
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閑居
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洛中寒徹骨、蟄居擁爐度嚴冬、但日夕聞得東山之疎鐘、是余最所愛
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閉門何所樂 門を閉ぢて何の楽む所ぞ、
聊倣古賢蹤 聊か古賢の蹤に倣ふ。
青帙悲遺響 青帙遺響を悲み、
紅爐愛暮鐘 紅炉暮鐘を愛す。
家貧飯味甘 家貧にして飯味甘く、
客少友情濃 客|少《まれ》にして友情濃し。
這裡君知不 這裡君知るやいなや、
久忘萬戸封 久しく忘る万戸の封。
[#地から1字上げ]二月十一日
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二月二十日訪洛北遂志軒、清談半日、至
黄昏辭去、連日微雪未已、歸途口占
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閑客間尋遂志軒 閑客間に尋ぬ遂志軒、
黄塵不到似孤村 黄塵到らず孤村に似たり。
煮茗圍爐微雪夕 茗を煮、炉を囲む、微雪の夕《ゆふべ》、
白頭相對脱乾坤 白頭相対して乾坤を忘[#「忘」に「〔ママ〕」の注記]る。
[#地から1字上げ]二月二十三日定
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京洛寒徹骨の詩を見たまひて、須磨伯父上わざわざ真綿入りの股引きを郵送され、今また遠くより木炭を持たせて使を寄越されたれば、痛み入りつつ、礼状のはしに書きつけし一首
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揀得幽居寄老身 幽居を揀び得て老身を寄す、
門前掃
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