随筆「断片」
河上肇
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)件《くだん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
×:伏せ字
(例)同僚の一人である××
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一
京都帝大の経済学部教授をしてゐた頃、大正九年九月の新学期から、私は経済学部の部長に補せられた。この地位には大概の教授がなりたがるのだが、私にとつて之は頗る迷惑であつた。と云ふのは、私はすでにその前年の一月に個人雑誌『社会問題研究』を創刊し、大概毎月一冊づつ之を刊行して居たから、いつも講義の準備に追はれてゐる私は、殆ど手一杯の仕事をして居るので、この上学校行政の俗務に携はりたくはなかつた。ただ学部の内規として、教授は就職順に一ヶ月づつ部長を勤めることになつて居たので、私一人がそれを断る訳にも行かなかつた。
ところが都合の好いことには、一月もたたないうちに私は病気に罹かつた。感冒で寝込んだ後、微熱が去らないので、当時医学部の内科教授をして居られた島薗博士
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