−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)始末に困《こう》じて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)思ふ程|燥《かわ》き果て

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)略※[#二の字点、1−2−22]《ほゞ》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)彼はとう/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 彼はとう/\始末に困《こう》じて、傍《かたはら》に寝てゐる妻をゆり起した。妻は夢心地に先程から子供のやんちや[#「やんちや」に傍点]とそれをなだめあぐんだ良人の声とを意識してゐたが、夜着に彼の手を感ずると、警鐘を聞いた消防夫の敏捷《びんせふ》さを以て飛び起きた。然し意識がぼんやり[#「ぼんやり」に傍点]して何をするでもなくそのまゝ暫くぢつとして坐つてゐた。
 彼のいら/\した声は然し直ぐ妻を正気に返らした。妻は急に瞼《まぶた》の重味が取り除《の》けられたのを感じながら、立上つて小さな寝床の側に行つた。布団から半分身
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