りませぬ。理論的に云つても実際的に云つても、深く突き進んで行けば行く程難関があつて、終極は現在の社会制度、社会生活の欠陥に突き当るのであります。
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然らば社会制度の欠陥とは何か、それは近代の社会思想家達の指摘した如く、資本の私有と云ふ誤れる制度に帰すると思ひます。この当然に共有であらねばならぬ筈の資本が、私有されるやうになり、それがために種々の弊害が生じて、当然人類的に進むべき筈の文化が、今日の如き変態的な姿となつて現れるやうになつたのであります。ですからこの制度を改めるに非ずんば、千万言を費しても文化の普及と云ふことは駄目であります。勿論其時代を迎へずして農民文化の問題を取扱ふと云ふことは、早計たるを免れませぬ。
◇
ではこの私有財産制度から、如何にして解放せらるべきかと云ふことが問題でありますが、これは先づ私達が機械化された生活から自由を囘復しなくてはなりませぬ。自由の囘復と云ふことは容易なことでなく、それは多くの学者や実際家が各自に究めようとしてゐる処で、私共門外漢には正しい解決は困難であります。けれども兎に角今日の私有制度を滅さねばならぬと云ふ
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