とが》めまい。かすかな暗示的表出をたよりにしてとにかく私は私自身を言い現わして見よう。
 無元から二元に、二元から一元に。保存から整理に、整理から創造に。無努力から努力に、努力から超努力に。これらの各※[#二の字点、1−2−22]の過程の最後のものが今表現せらるべく私の前にある。
 個性の緊張は私を拉《らつ》して外界に突貫せしめる。外界が個性に向って働きかけない中《うち》に、個性が進んで外界に働きかける。即ち個性は外界の刺戟《しげき》によらず、自己必然の衝動によって自分の生活を開始する。私はこれを本能的生活(impulsive life)と仮称しよう。
 何が私をしてこの衝動に燃え立たせるか。私は知らない。然し人は自然界の中にこの衝動の仮りの姿を認めることが出来ないだろうか。
 地球が造られた始めにはそこに痕跡《こんせき》すら有機物は存在しなかった。そこに、或る時期に至って有機物が現われ出た。それは或る科学者が想像するように他の星体から隕石《いんせき》に混入して地表に齎《もたら》されたとしても、少くとも有機物の存在に不適当だった地球は、いつの間にかその発達にすら適合するように変化してい
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