り得ることだ。然し二人の愛が互に完全に奪い合わないでいる場合でも、若し私の愛が強烈に働くことが出来れば、私の生長は益※[#二の字点、1−2−22]《ますます》拡張する。そして或る世界が――時間と空間をさえ撥無《はつむ》するほどの拡がりを持った或る世界が――個性の中にしっかりと建立《こんりゅう》される。そしてその世界の持つ飽くことなき拡充性が、これまでの私の習慣を破り、生活を変え、遂には弱い、はかない私の肉体を打壊するのだ。破裂させてしまうのだ。
難者のいう自滅とは畢竟《ひっきょう》何をさすのだろう。それは単に肉体の亡滅を指すに過ぎないではないか。私達は人間である。人間は必ずいつか死ぬ。何時《いつ》か肉体が亡びてしまう。それを避けることはどうしても出来ない。然し難者が、私が愛したが故に死なねばならぬ場合、私の個性の生長と自由とが失われていると考えるのは間違っている。それは個性の亡失ではない。肉体の破滅を伴うまで生長し自由になった個性の拡充を指しているのだ。愛なきが故に、個性の充実を得切らずに定命《じょうみょう》なるものを繋《つな》いで死なねばならぬ人がある。愛あるが故に、個性の充実を完
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