まさきあ》がりに広がって、おりから晴れ気味になった雲間を漏れる日の光が、地面の陰ひなたを銀と藍《あい》とでくっきり[#「くっきり」に傍点]といろどっている。寒い空気の中に、雪の照り返しがかっかっ[#「かっかっ」に傍点]と顔をほてらせるほど強くさして来る。君の顔は見る見る雪焼けがしてまっかに汗ばんで来た。今までがんじょうにかぶっていた頭巾《ずきん》をはねのけると、眼界は急にはるばると広がって見える。
なんという広大なおごそかな景色だ。胆振《いぶり》の分水嶺から分かれて西南をさす一連の山波が、地平から力強く伸び上がってだんだん高くなりながら、岩内の南方へ走って来ると、そこに図らずも陸の果てがあったので、突然水ぎわに走りよった奔馬が、そろえた前脚《まえあし》を踏み立てて、思わず平頸《ひらくび》を高くそびやかしたように、山は急にそそり立って、沸騰せんばかりに天を摩している。今にもすさまじい響きを立ててくずれ落ちそうに見えながら、何百万年か何千万年か、昔のままの姿でそそり立っている。そして今はただ一色の白さに雪でおおわれている。そして雲が空を動くたびごとに、山は居住まいを直したかのように姿を変
前へ
次へ
全114ページ中91ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング