。
人々は暗々裏にそれに脅かされている。いつどんな事がまくし上がるかもしれない――そういう不安は絶えず君たちの心を重苦しく押しつけた。家から火事を出すとか、家から出さないまでも類焼の災難にあうとか、持ち船が沈んでしまうとか、働き盛りの兄上が死病に取りつかれるとか、鰊《にしん》の群来《くき》がすっかり[#「すっかり」に傍点]はずれるとか、ワク船が流されるとか、いろいろに想像されるこれらの不幸の一つだけに出くわしても、君の家にとっては、足腰の立たない打撃となるのだ。疲れた五体を家路に運びながら、そしてばかに建物の大きな割合に、それにふさわない暗い灯《ひ》でそこと知られる柾葺《まさぶ》きの君の生まれた家屋を目の前に見やりながら、君の心は運命に対する疑いのために妙におくれがちになる。
それでも敷居《しきい》をまたぐと土間のすみの竈《かまど》には火が暖かい光を放って水飴《みずあめ》のようにやわらかく撓《しな》いながら燃えている。どこからどこまでまっ黒にすすけながら、だだっ広い囲炉裏の間《ま》はきちん[#「きちん」に傍点]と片付けてあって、居心よさそうにしつらえてある。嫂《あによめ》や妹の心づ
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