《かんしゃく》に漏らしているのがある。君はその男をよく知っている。小学校時代には教室まで一つだったのだ。それが十年かそこらの年月の間に、二人の生活は恐ろしくかけ隔たってしまったのだ。君はそんな人たちを一度でもうらやましいと思った事はない。その人たちの生活の内容のむなしさを想像する充分の力を君は持っている。そして彼らが彼らの導くような生活をするのは道理があると合点がゆく。金があって才能が平凡だったら勢いああしてわずかに生の倦怠《けんたい》からのがれるほかはあるまいとひそかに同情さえされぬではない。その人たちが生に飽満して暮らすのはそれでいい。しかし君の周囲にいる人たちがなぜあんな恐ろしい生死の境の中に生きる事を僥倖《ぎょうこう》しなければならない運命にあるのだろう。なぜ彼らはそんな境遇――死ぬ瞬間まで一分の隙《すき》を見せずに身構えていなければならないような境遇にいながら、なぜ生きようとしなければならないのだろう。これは君に不思議ななぞのようなここちを起こさせる。ほんとうに生は死よりも不思議だ。
その人たちは他人眼《よそめ》にはどうしても不幸な人たちと言わなければならない。しかし君自身
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