それを見るにつけても波の反対の側をひた押しに押す風の激しさ強さが思いやられた。艫《とも》を波のほうへ向ける事も得しないで、力なく漂う船の前まで来ると、波の山は、いきなり、獲物に襲いかかる猛獣のように思いきり背延びをした。と思うと、波頭は吹きつける風にそりを打って※[#「※」は「革へん+堂」、第3水準1−93−80、54−18]《どう》とくずれこんだ。
はっ[#「はっ」に傍点]と思ったその時おそく、君らはもうまっ白な泡《あわ》に五体を引きちぎられるほどもまれながら、船底を上にして顛覆《てんぷく》した船体にしがみつこうともがいていた。見ると君の目の届く所には、君の兄上が頭からずぶぬれになって、ぬるぬると手がかりのない舷《ふなべり》に手をあてがってはすべり、手をあてがってはすべりしていた。君は大声を揚げて何か言った。兄上も大声を揚げて何か言ってるらしかった。しかしお互いに大きな口をあくのが見えるだけで、声は少しも聞こえて来ない。
割合に小さな波があとからあとから押し寄せて来て、船を揺り上げたり押しおろしたりした。そのたびごとに君たちは船との縁を絶たれて、水の中に漂わねばならなかった。そし
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