なった舷《ふなべり》から二本突き出して、動かないように結びつける。船の顛覆《てんぷく》を少しなりとも防ごうためだ。君の兄上は帆綱を握って、舵座《かじざ》にいる父上の合図どおりに帆の上げ下げを誤るまいと一心になっている。そしてその間にもしっきり[#「しっきり」に傍点]なしに打ち込む浸水《あか》を急がしく汲《く》んでは舷から捨てている。命がけに呼びかわす互い互いの声は妙に上《うわ》ずって、風に半分がた消されながら、それでも五人の耳には物すごくも心強くも響いて来る。
「おも舵っ」
「右にかわすだってえば」
「右だ‥‥右だぞっ」
「帆綱をしめろやっ」
「友船は見えねえかよう、いたらくっつけ[#「くっつけ」に傍点]」やーい
どう吹こうとためらっていたような疾風がやがてしっかり[#「しっかり」に傍点]方向を定めると、これまでただあて[#「あて」に傍点]もなく立ち騒いでいたらしく見える三角波は、だんだんと丘陵のような紆濤《うねり》に変わって行った。言葉どおりに水平に吹雪《ふぶ》く雪の中を、後ろのほうから、見上げるような大きな水の堆積《たいせき》が、想像も及ばない早さでひた押しに押して来る
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