君は小ざかしい邪魔者から毛糸の襟巻《えりまき》で包んだ顔をそむけながら、配縄を丹念におろし続ける。
すっと空が明るくなる。霰《あられ》はどこかへ行ってしまった。そしてまっさおな海面に、漁船は陰になりひなたになり、堅い輪郭を描いて、波にもまれながらさびしく漂っている。
きげん買いな天気は、一日のうちに幾度となくこうした顔のしかめ方をする。そして日が西に回るに従ってこのふきげんは募って行くばかりだ。
寒暑をかまっていられない漁夫たちも吹きざらしの寒さにはひるまずにはいられない。配縄《はいなわ》を投げ終わると、身ぶるいしながら五人の男は、舵座《かじざ》におこされた焜炉《こんろ》の火のまわりに慕い寄って、大きなお櫃《ひつ》から握り飯をわしづかみにつかみ出して食いむさぼる。港を出る時には一かたまりになっていた友船も、今は木の葉のように小さく互い互いからかけ隔たって、心細い弱々しそうな姿を、涯《はて》もなく露領に続く海原《うなばら》のここかしこに漂わせている。三里の余も離れた陸地は高い山々の半腹から上だけを水の上に見せて、降り積んだ雪が、日を受けた所は銀のように、雲の陰になった所は鉛のように
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