走っているかをすぐ見て取る事ができる。
 帆がおろされる。勢いで走りつづける船足は、舵《かじ》のために右なり左なりに向け直される。同時に浮標《うき》の付いた配縄《はいなわ》の一端が氷のような波の中にざぶんざぶんと投げこまれる。二十五町から三十町に余る長さをもった縄全体が、海上に長々と横たえられるまでには、朝早くから始めても、日が子午線近く来るまでかからねばならないのだ。君らの船は艪《ろ》にあやつられて、横波を食いながらしぶしぶ[#「しぶしぶ」に傍点]進んで行く。ざぶり‥‥ざぶり‥‥寒気のために比重の高くなった海の水は、凍りかかった油のような重さで、物すごいインド藍《あい》の底のほうに、雲間を漏れる日光で鈍く光る配縄の餌《え》をのみ込んで行く。
 今まで花のような模様を描いて、海面のところどころに日光を恵んでいた空が、急にさっ[#「さっ」に傍点]と薄曇ると、どこからともなく時雨《しぐれ》のような霰《あられ》が降って来て海面を泡立《あわだ》たす。船と船とは、見る見る薄い糊《のり》のような青白い膜《まく》に隔てられる。君の周囲には小さな白い粒がかわき切った音を立てて、あわただしく船板を打つ。
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