しかし僕は君のために何をなす事ができようぞ。君とお会いした時も、君のような人が――全然都会の臭味から免疫されて、過敏な神経や過量な人為的知見にわずらわされず、強健な意力と、強靱《きょうじん》な感情と、自然に哺《はぐく》まれた叡智《えいち》とをもって自然を端的に見る事のできる君のような土の子が――芸術の捧誓者《ほうせいしゃ》となってくれるのをどれほど望んだろう。けれども僕の喉《のど》まで出そうになる言葉をしいておさえて、すべてをなげうって芸術家になったらいいだろうとは君に勧めなかった。
それを君に勧めるものは君自身ばかりだ。君がただひとりで忍ばなければならない煩悶《はんもん》――それは痛ましい陣痛の苦しみであるとは言え、それは君自身の苦しみ、君自身で癒《いや》さなければならぬ苦しみだ。
地球の北端――そこでは人の生活が、荒くれた自然の威力に圧倒されて、痩地《やせじ》におとされた雑草の種のように弱々しく頭をもたげてい、人類の活動の中心からは見のがされるほど隔たった地球の北端の一つの地角に、今、一つのすぐれた魂は悩んでいるのだ。もし僕がこの小さな記録を公にしなかったならばだれもこのすぐれ
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