企図《たくらみ》が目ざめていたのだ。それはきょうに始まった事ではない。ともすれば君の油断を見すまして、泥沼《どろぬま》の中からぬるり[#「ぬるり」に傍点]と頭を出す水の精のように、その企図は心の底から現われ出るのだ。君はそれを極端に恐れもし、憎みもし、卑しみもした。男と生まれながら、そんな誘惑を感ずる事さえやくざ[#「やくざ」に傍点]な事だと思った。しかしいったんその企図が頭をもたげたが最後、君は魅入られた者のように、もがき苦しみながらも、じりじり[#「じりじり」に傍点]とそれを成就するためには、すべてを犠牲にしても悔いないような心になって行くのだ、その恐ろしい企図《たくらみ》とは自殺する事なのだ。
 君の心は妙にしん[#「しん」に傍点]と底冷えがしたようにとげとげしく澄み切って、君の目に映る外界の姿は突然全く表情を失ってしまって、固い、冷たい、無慈悲な物の積み重なりに過ぎなかった。無際限なただ一つの荒廃――その中に君だけが呼吸を続けている、それがたまらぬほどさびしく恐ろしい事に思いなされる荒廃が君の上下四方に広がっている。波の音も星のまたたきも、夢の中の出来事のように、君の知覚の遠い
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