瀬はぐっ[#「ぐっ」に傍点]と癪《しゃく》にさわった。
「柿江……貴様あ逃げかくれをするな。俺は今日は貴様の面皮《めんぴ》を剥ぎに来たんだ。まあいいから坐ってろ。……俺は柿江の面皮を剥ぎに来た、と。……だ、そうでもねえ。俺は皆んなに泣いてもらいに来たんだ。石岡、貴様はだめだ。貴様のようなファナティックはだめだとしてだ、……おい、皆んな立つなよ。……何んだ、試験だ……試験ぐらい貴様、教場に行って居眠りをしていりゃあ、その間に書けっちまうじゃねえか」
「俺に用がなければ行くぞ」
石岡が顔色も動かさずにそういいながら座をはずしかけた。
「石岡、貴様はクリスチャンじゃねえか。一人の罪人が……貴様はいつでも俺のことをそういうな。いんやそういう。……罪人が泣いてもらいたいといっているのが聞こえなかったんか。……たとえ俺がだめだといったところが、貴様の方で……まあ坐れ、坐ってくれ。……一人でも減ると俺はおもしろくないんだ……坐れえおい。俺が命令するぞ」
婆やが何かいいながらチャブ台を引いた。壁ぎわに行ってばらばらにそれに倚《よ》りかかっている五人が、朦朧《もうろう》と渡瀬の眼に映った。ただ何んと
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