ぐり始めた。
 色慾の遊戯に慣れた渡瀬には、恋愛などというしゃら[#「しゃら」に傍点]臭いものは、要するに肉の接触に衣をかけたまやかしものにすぎない。男女の間の情愛は肉をとおして後に開かれるのだと、今までの経験からも決《き》めている渡瀬には、これほど嵩《こう》じてきた恐ろしい衝動を堰《せ》きとめる力はもうなくなりかけていた。彼は顔にまで充血を感じながら、「おぬいさん逃げるなら今のうちだ。早く逃げないと僕は何をするか、自分でも分らないよ」と憫《あわ》れむがごとくに自分の前にうずくまる豊麗な新鮮な肉体に心の中でささやいたが、同時に、「逃げるなら逃げてみろ。逃げようとて逃がしてたまるか」と頑張るものがますます勢いを逞《たくま》しくした。眼の前がかすみ始めた。
 いつの間にかおぬいさんの声がしなくなっていた。それに気づくとさすがに渡瀬は我れに返った。そしてさすがに自分を恥じた。おぬいさんは渡瀬が今まで妄想していたところよりあまりかけ離れた清いところにいた。彼は書物の方に顔を寄せながら、ともかく、
「ええと、それは」
 といったが、どこに不審の箇所があるのか皆目《かいもく》知れなかった。
「どこ
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