ん、あれは高根の花です。ピュリティーそのものなんです。さすがの僕もおぬいさんの前に出ると、慎《つつし》みの心が無性に湧き上るんだから手がつけられない……そんなに笑っちゃだめですよ、奥さん、それはまったくの話です。……何、信用しない……それはひどいですよ、奥さん。僕なんざあとてもおぬいさんのマッチではない。マッチですか。マッチというと相方かな(これはしまったと思って、渡瀬は素早く奥さんの顔色を窺《うかが》ったが、案外平気なので、おっかぶせて言葉を続けた)相手かな……相手になれないと諦める気ばかり先に立つのです。おぬいさんの前に出ると、このガンベもまったく前非《ぜんぴ》を後悔しますね」
「そんなに後悔することがたくさんおありなさるの」
「ばかにしちゃいけません。ばかにしちゃあ……」
 渡瀬はまたあとを高笑で塗りつぶした。この女は生れてから満足した男に出遇ったことがないに違いない。ずいぶんいろいろな男の手から手に渡ったらしいのに、それだからたまには不愉快なほど人擦れがしているくせに、どこかさぐり寄るような人なつっこいところも持っている。こういう女に限って若い男が近づくと、どんなにしゃん[#「
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