いをなおして園の方にまともに顔を向けた。
「園さん。おっしゃることはいちいち私にもよく解りました。それだけおっしゃってくださるのを私は親として誠にありがたく存じますけれども、娘は不束《ふつつ》かで、そういうことを考えてみたこともないようでございますし、……もっともゆっくりよく尋ねてはみましょうけれども、……それによく考えてみなければならないことでもございますししますから……今夜はそれを伺っておくだけにさせていただきとうございますが……悪るくお取りくださいますなよ……あなたのようにそう隠しだてなく言っていただくと、私は嬉しゅうございます、本当に。……どんな仕合せになりましょうとも、ぬいもあなたのお志はうれしく存じますでしょう」
小母さんの声は意外にも曇って震えていた。園はもとより今夜の告白からすぐ結果を望もうとなどはしていなかったのだ。心の中では、もちろんそんなことを即座に伺おうなどとは思っていませんといいたかったけれども、それが言葉にはならなかった。
隣の部屋でおぬいさんが忍び泣きをしている……それを園ははっきり感じた。彼は身の内が氷のように引き締まるのを覚えた。強い緊張のために、肩の凝りきった時のような感じが体全体に漲《みなぎ》った。自分の少しばかりの言葉がおぬいさんを泣くほどに苦しめたかと思うと、園は今夜の浅慮《せんりょ》を悔いるような気にもなった。しかしながらそれはけっして浅慮ではないと園は思い返した。おぬいさんを本当に愛するなら、おぬいさんの気持に絶対自由を与えなければならない。何らかの義務を感じさせておぬいさんを苦しめては忍んでいられない。そういう気持が何よりも先きに立った。
「何んだか僕は自分のしたことが乱暴すぎたかとも思いもします……もしそうでしたら、ごめんください。僕はけっしてどんな結果をも恐れてはいませんから、どうか十分自由なお気持で今までのことをお聞きくださいまし。……僕は今夜きゅうに東京に帰らなければなりません。少し思いがけない不幸に遇いましたから。そのことはいずれ手紙で申しあげます。……それではもう時間がありませんからお暇します。……英語の方をまた休まなければならなくなって……」
とできるだけ冷静な言葉で言おうとしたが、自分ながら意気地なく声が震えを帯びた。もし事が破れたら、この家にはもう来られないのだ。ふと彼はそう思うと限りなく淋しか
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