ことを仮想したら、(その芸術家はそんなことを主張するはずはないけれども)あるいはそれは実感として私の頭に響くかもしれない。しかしながら広津氏の筆によって教えられることになると、私にはお座なりの概念論としてより響かなくなる。なぜならば、それは主張さるべからざる人によって主張された議論だからである。
さらに私の芸術家として作品を生かそうとする意味はどこにあるかということについては、「改造」誌上で一とおり申し出ておいたから、ここには再言しない。なにしろ私は私の実情から出発する。私がもし第一の芸術家にでもなりきりうる時節が来たならば、この縷説《るせつ》は鶏肋《けいろく》にも値せぬものとして屑籠《くずかご》にでも投じ終わろう。
底本:「惜しみなく愛は奪う」角川文庫、角川書店
1969(昭和44)年1月30日改版初版
1979(昭和54)年4月30日発行改版14版
初出:「東京朝日新聞」
1922(大正11)年1月19日
入力:鈴木厚司
1999年2月13日公開
2005年11月20日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全6ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング