泣いていて、すぐそれを食べるのはすこしはずかしかったけれども、すぐ食べはじめた。
そこに、焼けあとで働いている人足《にんそく》が来て、ポチが見つかったと知らせてくれた。ぼくたちもだったけれども、おばあさまやおかあさんまで、大さわぎをして「どこにいました」とたずねた。
「ひどいけがをして物置きのかげにいました」
と人足の人はいって、すぐぼくたちを連れていってくれた。ぼくはにぎり飯をほうり出して、手についてる御飯つぶを着物ではらい落としながら、大急ぎでその人のあとから駆《か》け出した。妹や弟も負けず劣《おと》らずついて来た。
半焼けになった物置きが平べったくたおれている、その後ろに三、四人の人足がかがんでいた。ぼくたちをむかえに来てくれた人足はその仲間《なかま》の所にいって、「おい、ちょっとそこをどきな」といったらみんな立ち上がった。そこにポチがまるまって寝《ね》ていた。
ぼくたちは夢中《むちゅう》になって「ポチ」とよびながら、ポチのところに行った。ポチは身動きもしなかった。ぼくたちはポチを一目見ておどろいてしまった。からだじゅうをやけどしたとみえて、ふさふさしている毛がところどこ
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