を開けて下さいました。二人は部屋の中に這入りました。
「ジム、あなたはいい子、よく私《わたくし》の言ったことがわかってくれましたね。ジムはもうあなたからあやまって貰《もら》わなくってもいいと言っています。二人は今からいいお友達になればそれでいいんです。二人とも上手《じょうず》に握手をなさい。」と先生はにこにこしながら僕達を向い合せました。僕はでもあんまり勝手過ぎるようでもじもじしていますと、ジムはいそいそとぶら下げている僕の手を引張り出して堅く握ってくれました。僕はもうなんといってこの嬉《うれ》しさを表せばいいのか分らないで、唯《ただ》恥しく笑う外《ほか》ありませんでした。ジムも気持よさそうに、笑顔をしていました。先生はにこにこしながら僕に、
「昨日《きのう》の葡萄《ぶどう》はおいしかったの。」と問われました。僕は顔を真赤《まっか》にして「ええ」と白状するより仕方がありませんでした。
「そんなら又あげましょうね。」
そういって、先生は真白《まっしろ》なリンネルの着物につつまれた体《からだ》を窓からのび出させて、葡萄の一房をもぎ取って、真白《まっしろ》い左の手の上に粉のふいた紫色の房を
前へ
次へ
全16ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
有島 武郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング