けして持ち出すのにも、女将《おかみ》は自分の女中たちにまで、それが倉地の本宅に運ばれるものだといって知らせた。運搬人はすべて芝《しば》のほうから頼んで来た。そして荷物があらかた[#「あらかた」に傍点]片づいた所で、ある夜おそく、しかもびしょびしょと吹き降りのする寒い雨風のおりを選んで葉子は幌車《ほろぐるま》に乗った。葉子としてはそれほどの警戒をするには当たらないと思ったけれども、女将《おかみ》がどうしてもきかなかった。安全な所に送り込むまではいったんお引き受けした手まえ、気がすまないといい張った。
葉子があつらえておいた仕立ておろしの衣類を着かえているとそこに女将《おかみ》も来合わせて脱ぎ返しの世話を見た。襟《えり》の合わせ目をピンで留めながら葉子が着がえを終えて座につくのを見て、女将はうれしそうにもみ手をしながら、
「これであすこに大丈夫着いてくださりさえすればわたしは重荷が一つ降りると申すものです。しかしこれからがあなたは御大抵《ごたいてい》じゃこざいませんね。あちらの奥様の事など思いますと、どちらにどうお仕向けをしていいやらわたしにはわからなくなります。あなたのお心持ちもわた
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