で、葉子は鋭く倉地に目くばせしたが、倉地は無頓着《むとんじゃく》だった。そして古藤のいるのなどは度外視した傍若無人《ぼうじゃくぶじん》さで、火鉢《ひばち》の向こう座にどっかとあぐらをかいた。
 古藤は倉地を一目見るとすぐ倉地と悟ったらしかった。いつもの癖で古藤はすぐ極度に固くなった。中断された話の続きを持ち出しもしないで、黙ったまま少し伏《ふ》し目になってひかえていた。倉地は古藤から顔の見えないのをいい事に、早く古藤を返してしまえというような顔つきを葉子にして見せた。葉子はわけはわからないままにその注意に従おうとした。で、古藤の黙ってしまったのをいい事に、倉地と古藤とを引き合わせる事もせずに自分も黙ったまま静かに鉄びんの湯を土《ど》びんに移して、茶を二人《ふたり》に勧めて自分も悠々《ゆうゆう》と飲んだりしていた。
 突然古藤は居ずまいをなおして、
 「もう僕は帰ります。お話は中途ですけれどもなんだか僕はきょうはこれでおいとまがしたくなりました。あとは必要があったら手紙を書きます」
 そういって葉子にだけ挨拶《あいさつ》して座を立った。葉子は例の芸者のような姿のままで古藤を玄関まで送り出
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