ものだから……ほんとうをいうとかなり不快を感じていた所だったのです。思ったとおりをいいますから怒《おこ》らないで聞いてください」
 「何を怒《おこ》りましょう。ようこそはっきり[#「はっきり」に傍点]おっしゃってくださるわね。あれはわたしもあとでほんとうにすまなかったと思いましたのよ。木村が思うようにわたしは他人の誤解なんぞそんなに気にしてはいないの。小さい時から慣れっこになってるんですもの。だから皆さんが勝手なあて推量《ずいりょう》なぞをしているのが少しは癪《しゃく》にさわったけれども、滑稽《こっけい》に見えてしかたがなかったんですのよ。そこにもって来て電話であなたのお声が聞こえたもんだから、飛び立つようにうれしくって思わずしらずあんな軽はずみな事をいってしまいましたの。木村から頼まれて私の世話を見てくださった倉地という事務長の方《かた》もそれはきさく[#「きさく」に傍点]な親切な人じゃありますけれども、船で始めて知り合いになった方《かた》だから、お心安立《こころやすだ》てなんぞはできないでしょう。あなたのお声がした時にはほんとうに敵の中から救い出されたように思ったんですもの……まあ
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