りになっていてもびく[#「びく」に傍点]ともしないという自信もなくって、ずるずるべったりに無反省に借りばかり作っているのは考えてみると不安じゃないでしょうか。葉子さん、あなたには美しい誠実があるんだ。僕はそれを知っています。木村にだけはどうしたわけか別だけれども、あなたはびた[#「びた」に傍点]一|文《もん》でも借りをしていると思うと寝心地《ねごこち》が悪いというような気象を持っているじゃありませんか。それに心の借金ならいくら借金をしていても平気でいられるわけはないと思いますよ。なぜあなたは好んでそれを踏みにじろうとばかりしているんです。そんな情けない事ばかりしていてはだめじゃありませんか。……僕ははっきり[#「はっきり」に傍点]思うとおりをいい現わし得ないけれども……いおうとしている事はわかってくださるでしょう」
古藤は思い入ったふうで、油でよごれた手を幾度もまっ黒に日に焼けた目がしらの所に持って行った。蚊がぶんぶんと攻めかけて来るのも忘れたようだった。葉子は古藤の言葉をもうそれ以上は聞いていられなかった。せっかくそっ[#「そっ」に傍点]として置いた心のよどみがかきまわされて、見ま
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