おうと思ったけれども、父や母もそんなに大きくなって何をばかをいうのだといって少しも葉子のいう事を取り上げてはくれなかった。葉子はしばらく両親と争っているうちにいつのまにか寝入ったと見えて、翌日目をさまして見ると、やはり自分が気味の悪いと思った所に寝ていた自分を見いだした。その夕方、同じ旅籠屋《はたごや》の二階の手摺《てすり》から少し荒れたような庭を何の気なしにじっ[#「じっ」に傍点]と見入っていると、急に昨夜の事を思い出して葉子は悲しくなり出した。父にも母にも世の中のすべてのものにも自分はどうかして見放されてしまったのだ。親切らしくいってくれる人はみんな自分に虚事《うそ》をしているのだ。いいかげんの所で自分はどん[#「どん」に傍点]とみんなから突き放されるような悲しい事になる[#底本では「悲しい事にある」]に違いな「。どうしてそれを今まで気づかずにいたのだろう。そうなった暁《あかつき》に一人《ひとり》でこの庭をこうして見守ったらどんなに悲しいだろう。小さいながらにそんな事を一人で思いふけっているともうとめどなく悲しくなって来て父がなんといっても母がなんといっても、自分の心を自分の涙にひ
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