傍点]……愛子さんどうしたというんだろう。どれねえさんにお貸し、そしてあなたは……貞《さあ》ちゃんも古藤さんの所に行ってお相手をしておいで……」
「僕《ぼく》は倉地さんにあって来ます」
突然後ろ向きの古藤は畳に片手をついて肩越しに向き返りながらこういった。そして葉子が返事をする暇もなく立ち上がって階子段《はしごだん》を降りて行こうとした。葉子はすばやく[#「すばやく」に傍点]愛子に目くばせして、下に案内して二人《ふたり》の用を足してやるようにといった。愛子は急いで立って行った。
葉子は縫い物をしながら多少の不安を感じた。あのなんの技巧もない古藤と、疳癖《かんぺき》が募り出して自分ながら始末をしあぐねているような倉地とがまとも[#「まとも」に傍点]にぶつかり合ったら、どんな事をしでかすかもしれない。木村を手の中に丸めておく事もきょう二人の会見の結果でだめになるかもわからないと思った。しかし木村といえば、古藤のいう事などを聞いていると葉子もさすがにその心根《こころね》を思いやらずにはいられなかった。葉子がこのごろ倉地に対して持っているような気持ちからは、木村の立場や心持ちがあからさま
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