いるようですね」
「えゝ、少しはね」
「少しどころじゃないようですよ僕《ぼく》の所に来る手紙によると。なんでも来年に開かれるはずだった博覧会が来々年《さらいねん》に延びたので、木村はまたこの前以上の窮境に陥ったらしいのです。若いうちだからいいようなもののあんな不運な男もすくない。金も送っては来ないでしょう」
なんというぶしつけ[#「ぶしつけ」に傍点]な事をいう男だろうと葉子は思ったが、あまりいう事にわだかまり[#「わだかまり」に傍点]がないので皮肉でもいってやる気にはなれなかった。
「いゝえ相変わらず送ってくれますことよ」
「木村っていうのはそうした男なんだ」
古藤は半ばは自分にいうように感激した調子でこういったが、平気で仕送りを受けているらしく物をいう葉子にはひどく反感を催したらしく、
「木村からの送金を受け取った時、その金があなたの手を焼きただらかすようには思いませんか」
と激しく葉子をまとも[#「まとも」に傍点]に見つめながらいった。そして油でよごれたような赤い手で、せわしなく胸の真鍮《しんちゅう》ぼたんをはめたりはずしたりした。
「なぜですの」
「木村は困り
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