章を付けて、あぐらをかきながら貞世と何か話をしていた。葉子は今まで泣き苦しんでいたとは思えぬほど美しいきげんになっていた。簡単な挨拶《あいさつ》を済ますと古藤は例のいうべき事から先にいい始めた。
「ごめんどうですがね、あす定期検閲な所が今度は室内の整頓《せいとん》なんです。ところが僕《ぼく》は整頓風呂敷《せいとんぶろしき》を洗濯《せんたく》しておくのをすっかり[#「すっかり」に傍点]忘れてしまってね。今特別に外出を伍長《ごちょう》にそっ[#「そっ」に傍点]と頼んで許してもらって、これだけ布を買って来たんですが、縁《ふち》を縫ってくれる人がないんで弱って駆けつけたんです。大急ぎでやっていただけないでしょうか」
「おやすい御用ですともね。愛さん!」
大きく呼ぶと階下にいた愛子が平生《へいぜい》に似合わず、あたふた[#「あたふた」に傍点]と階子段《はしごだん》をのぼって来た。葉子はふとまた倉地を念頭に浮かべていやな気持ちになった。しかしそのころ貞世から愛子に愛が移ったかと思われるほど葉子は愛子を大事に取り扱っていた。それは前にも書いたとおり、しいても他人に対する愛情を殺す事によって、倉
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