るような事柄を数々《かずかず》葉子は聞かされた。葉子はしまいには自分自身を護《まも》るためにも正井のきげんを取りはずしてはならないと思うようになった。そして正井の言葉が一語一語思い出されて、夜なぞになると眠らせぬほどに葉子を苦しめた。葉子はまた一つの重い秘密を背負わなければならぬ自分を見いだした。このつらい意識はすぐにまた倉地に響くようだった。倉地はともすると敵の間諜《かんちょう》ではないかと疑うような険しい目で葉子をにらむようになった。そして二人《ふたり》の間にはまた一つの溝《みぞ》がふえた。
 そればかりではなかった。正井に秘密な金を融通するためには倉地からのあてがい[#「あてがい」に傍点]だけではとても足りなかった。葉子はありもしない事を誠《まこと》しやかに書き連ねて木村のほうから送金させねばならなかった。倉地のためならとにもかくにも、倉地と自分の妹たちとが豊かな生活を導くためにならとにもかくにも、葉子に一種の獰悪《どうあく》な誇りをもってそれをして、男のためになら何事でもという捨てばちな満足を買い得ないではなかったが、その金がたいてい正井のふところに吸収されてしまうのだと思うと
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