われてこそこそと逃げ出すわけにも行かないし」
「おれが一つ顔を出して見せればまたおもしろかったにな」
「きょうは妙な人にあってしまったからまたきっとだれかにあいますよ。奇妙ねえ、お客様が来たとなると不思議にたて続くし……」
「不仕合わせなんぞも来出すと束《たば》になって来くさるて」
倉地は何か心ありげにこういって渋い顔をしながらこの笑い話を結んだ。
葉子はけさの発作《ほっさ》の反動のように、田川夫人の事があってからただ何となく心が浮き浮きしてしようがなかった。もしそこに客がいなかったら、葉子は子供のように単純な愛矯者《あいきょうもの》になって、倉地に渋い顔ばかりはさせておかなかったろう。「どうして世の中にはどこにでも他人の邪魔に来ましたといわんばかりにこうたくさん人がいるんだろう」と思ったりした。それすらが葉子には笑いの種《たね》となった。自分たちの向こう座にしかつめらしい顔をして老年の夫婦者がすわっているのを、葉子はしばらくまじ[#「まじ」に傍点]まじと見やっていたが、その人たちのしかつめらしいのが無性《むしょう》にグロテスクな不思議なものに見え出して、とうとう我慢がしきれ
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