べの事は夢であらねばならぬ。二つが両立しようはずはない。……葉子は茫然《ぼうぜん》としてなお目にはいって来るものをながめ続けた。
痲痺《まひ》しきったような葉子の感覚はだんだん回復して来た。それと共に瞑眩《めまい》を感ずるほどの頭痛をまず覚えた。次いで後腰部に鈍重な疼《いた》みがむくむくと頭をもたげるのを覚えた。肩は石のように凝っていた。足は氷のように冷えていた。
ゆうべの事は夢ではなかったのだ……そして今見るこの景色も夢ではあり得ない……それはあまりに残酷だ、残酷だ。なぜゆうべをさかいにして、世の中はかるたを裏返したように変わっていてはくれなかったのだ。
この景色のどこに自分は身をおく事ができよう。葉子は痛切に自分が落ち込んで行った深淵《しんえん》の深みを知った。そしてそこにしゃがん[#「しゃがん」に傍点]でしまって、苦《にが》い涙を泣き始めた。
懺悔《ざんげ》の門の堅く閉ざされた暗い道がただ一筋、葉子の心の目には行く手に見やられるばかりだった。
三四
ともかくも一家の主となり、妹たちを呼び迎えて、その教育に興味と責任とを持ち始めた葉子は、自然自然に妻らしくまた
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