んなわたしだかわたしではないか……(そこで葉子は倉地から離れてきちん[#「きちん」に傍点]とすわり直して袂《たもと》で顔をおおうてしまった)泥棒《どろぼう》をしろとおっしゃるほうがまだ増しです……あなたお一人《ひとり》でくよ[#「くよ」に傍点]くよなさって……お金の出所を……暮らし向きが張り過ぎるなら張り過ぎると……なぜ相談に乗らせてはくださらないの……やはりあなたはわたしを真身《しんみ》には思っていらっしゃらないのね……」
 倉地は一度は目を張って驚いたようだったが、やがて事もなげに笑い出した。
 「そんな事を思っとったのか。ばかだなあお前は。御好意は感謝します……全く。しかしなんぼやせても枯れても、おれは女の子の二人《ふたり》や三人養うに事は欠かんよ。月に三百や四百の金が手回らんようなら首をくくって死んで見せる。お前をまで相談に乗せるような事はいらんのだよ。そんな陰にまわった心配事はせん事にしようや。こののんき坊のおれまでがいらん気をもませられるで……」
 「そりゃうそです」
 葉子は顔をおおうたままきっぱり[#「きっぱり」に傍点]と矢継ぎ早にいい放った。倉地は黙ってしまった。葉子
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