例のいたずら心から古藤を手なずける興味をそそられないでもなかった。しかしそれを実行に移すまでにその興味は嵩《こう》じては来なかったのでそのままにしておいた。
木村の仕事は思いのほか都合よく運んで行くらしかった。「日本における未来のピーボデー」という標題に木村の肖像まで入れて、ハミルトン氏配下の敏腕家の一人《ひとり》として、また品性の高潔な公共心の厚い好個の青年実業家として、やがては日本において、米国におけるピーボデーと同様の名声をかちうべき約束にあるものと賞賛したシカゴ・トリビューンの「青年実業家評判記」の切り抜きなどを封入して来た。思いのほか巨額の為替《かわせ》をちょいちょい送ってよこして、倉地氏に支払うべき金額の全体を知らせてくれたら、どう工面《くめん》しても必ず送付するから、一日も早く倉地氏の保護から独立して世評の誤謬《ごびゅう》を実行的に訂正し、あわせて自分に対する葉子の真情を証明してほしいなどといってよこした。葉子は――倉地におぼれきっている葉子は鼻の先でせせら笑った。
それに反して倉地の仕事のほうはいつまでも目鼻がつかないらしかった。倉地のいう所によれば日本だけの水先案
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