。……けれどもね、木村とのあの事だけはまだ内証よ。いいおりを見つけて、わたしから上手《じょうず》にいって聞かせるまでは知らんふりをしてね……よくって……あなたはうっかり[#「うっかり」に傍点]するとあけすけ[#「あけすけ」に傍点]に物をいったりなさるから……今度だけは用心してちょうだい」
「ばかだなどうせ知れる事を」
「でもそれはいけません……ぜひ」
葉子は後ろから背延びをしてそっ[#「そっ」に傍点]と倉地の後ろ首を吸った。そして二人は顔を見合わせてほほえみかわした。
その瞬間に勢いよく玄関の格子戸《こうしど》ががらっ[#「がらっ」に傍点]とあいて「おゝ寒い」という貞世の声が疳高《かんだか》く聞こえた。時間でもないので葉子は思わずぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]として倉地から飛び離れた。次いで玄関口の障子《しょうじ》があいた。貞世は茶の間に駆け込んで来るらしかった。
「おねえ様雪が降って来てよ」
そういっていきなり[#「いきなり」に傍点]茶の間の襖《ふすま》をあけたのは貞世だった。
「おやそう……寒かったでしょう」
とでもいって迎えてくれる姉を期待していたらしい貞世は、置き
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