事とは別物ですものねえ。せめては奥さんがわたしを詛《のろ》い殺そうとでもしてくだされば少しは気持ちがいいんだけれども、しとやかにしてお里に帰っていらっしゃると思うとつい身につまされてしまいます。だからといってわたしは自分が命をなげ出して築き上げた幸福を人に上げる気にはなれません。あなたがわたしをお捨てになるまではね、喜んでわたしはわたしを通すんです。……けれどもお子さんならわたしほんとうにちっとも[#「ちっとも」に傍点]構いはしない事よ。どうお呼び寄せになっては?」
「ばかな。今さらそんな事ができてたまるか」倉地はかんで捨てるようにそういって横を向いてしまった。ほんとうをいうと倉地の妻の事をいった時には葉子は心の中をそのままいっていたのだ。その娘たちの事をいった時にはまざまざとした虚言《うそ》をついていたのだ。葉子の熱意は倉地の妻をにおわせるものはすべて憎かった。倉地の家のほうから持ち運ばれた調度すら憎かった。ましてその子が呪《のろ》わしくなくってどうしよう。葉子は単に倉地の心を引いてみたいばかりに怖々《こわごわ》ながら心にもない事をいってみたのだった。倉地のかんで捨てるような言葉は
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