地《ごこち》でかいでいるようだったが、やがて物たるげに、
 「もう起きたんか。何時《なんじ》だな」
 といった。まるで大きな子供のようなその無邪気さ。葉子は思わず自分の頬《ほお》を倉地のにすりつけると、寝起きの倉地の頬は火のように熱く感ぜられた。
 「もう八時。……お起きにならないと横浜のほうがおそくなるわ」
 倉地はやはり物たるげに、袖口《そでぐち》からにょきん[#「にょきん」に傍点]と現われ出た太い腕を延べて、短い散切《ざんぎ》り頭をごしごしとかき回しながら、
 「横浜?……横浜にはもう用はないわい。いつ首になるか知れないおれがこの上の御奉公をしてたまるか。これもみんなお前のお陰だぞ。業《ごう》つくばりめ」
 といっていきなり[#「いきなり」に傍点]葉子の首筋を腕にまいて自分の胸に押しつけた。
 しばらくして倉地は寝床を出たが、昨夜の事などはけろり[#「けろり」に傍点]と忘れてしまったように平気でいた。二人《ふたり》が始めて離れ離《ばな》れに寝たのにも一言《ひとこと》もいわないのがかすかに葉子を物足らなく思わせたけれども、葉子は胸が広々としてなんという事もなく喜ばしくってたまらなか
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