っしゃってくださいまし」
 叔父があわてて口の締まりをして仏頂面《ぶっちょうづら》に立ち返って、何かいおうとすると、葉子はまたそれには頓着《とんじゃく》なく五十川《いそがわ》女史のほうに向いて、
 「あの肩の凝《こ》りはすっかり[#「すっかり」に傍点]おなおりになりまして」
 といったので、五十川女史の答えようとする言葉と、叔父のいい出そうとする言葉は気まずくも鉢合《はちあ》わせになって、二人《ふたり》は所在なげに黙ってしまった。座敷は、底のほうに気持ちの悪い暗流を潜めながら造り笑いをし合っているような不快な気分に満たされた。葉子は「さあ来い」と胸の中で身構えをしていた。五十川女史のそばにすわって、神経質らしく眉《まゆ》をきらめかす中老の官吏は、射るようないまいましげな眼光を時々葉子に浴びせかけていたが、いたたまれない様子でちょっと居ずまいをなおすと、ぎくしゃく[#「ぎくしゃく」に傍点]した調子で口をきった。
 「葉子さん、あなたもいよいよ身のかたまる瀬戸ぎわまでこぎ付けたんだが……」
 葉子はすきを見せたら切り返すからといわんばかりな緊張した、同時に物を物ともしないふうでその男の目を
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