って。……もっともこれは、あなたのおために申しますの。わたしはだれにあやまっていただくのもいやですし、だれにあやまるのもいやな性分《しょうぶん》なんですから、おじさんに許していただこうとは頭《てん》から思ってなどいはしませんの。それもついでにおっしゃってくださいまし」
 口のはたに戯談《じょうだん》らしく微笑を見せながら、そういっているうちに、大濤《おおなみ》がどすん[#「どすん」に傍点]どすんと横隔膜につきあたるような心地《ここち》がして、鼻血でも出そうに鼻の孔《あな》がふさがった。門を出る時も口びるはなおくやしそうに震えていた。日は植物園の森の上に舂《うすず》いて、暮れがた近い空気の中に、けさから吹き出していた風はなぎた。葉子は今の心と、けさ早く風の吹き始めたころに、土蔵わきの小部屋《こべや》で荷造りをした時の心とをくらべて見て、自分ながら同じ心とは思い得なかった。そして門を出て左に曲がろうとしてふと道ばたの捨て石にけつまずいて、はっ[#「はっ」に傍点]と目がさめたようにあたりを見回した。やはり二十五の葉子である。いヽえ昔たしかに一度けつまずいた事があった。そう思って葉子は迷信家の
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