すみまできちん[#「きちん」に傍点]と小ぎれいに片付いているのに引きかえて、叔母《おば》一家の住まう下座敷は変に油ぎってよごれていた。白痴の子が赤ん坊同様なので、東の縁に干してある襁褓《むつき》から立つ塩臭いにおいや、畳の上に踏みにじられたままこびりついている飯粒などが、すぐ葉子の神経をいらいらさせた。玄関に出て見ると、そこには叔父《おじ》が、襟《えり》のまっ黒に汗じんだ白い飛白《かすり》を薄寒そうに着て、白痴の子を膝《ひざ》の上に乗せながら、朝っぱらから柿《かき》をむいてあてがっていた。その柿の皮があかあかと紙くずとごったになって敷き石の上に散っていた。葉子は叔父にちょっと挨拶《あいさつ》をして草履《ぞうり》をさがしながら、
 「愛さんちょっとここにおいで。玄関が御覧、あんなによごれているからね、きれいに掃除《そうじ》しておいてちょうだいよ。――今夜はお客様もあるんだのに……」
 と駆けて来た愛子にわざとつんけん[#「つんけん」に傍点]いうと、叔父は神経の遠くのほうであてこすられたのを感じたふうで、
 「おヽ、それはわしがしたんじゃで、わしが掃除しとく。構《かも》うてくださるな、おい
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