ゆ》の下にあるが、一方のは不思議にも眉の上にある、その男の額から黒血がどくどくと流れた。男は死んでも物すごくにやりにやりと笑い続けていた。その笑い声が木村木村と聞こえた。始めのうちは声が小さかったがだんだん大きくなって数もふえて来た。その「木村木村」という数限りもない声がうざうざと葉子を取り巻き始めた。葉子は一心に手を振ってそこからのがれようとしたが手も足も動かなかった。
                   木村……
               木村
           木村      木村……
       木村      木村
   木村      木村      木村……
       木村      木村
           木村      木村……
               木村
                   木村……
 ぞっ[#「ぞっ」に傍点]として寒気《さむけ》を覚えながら、葉子は闇《やみ》の中に目をさました。恐ろしい凶夢のなごりは、ど、ど、ど……と激しく高くうつ心臓に残っていた。葉子は恐怖におびえながら一心に暗い中をおどおどと手探りに探ると事務長の胸
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